凹
2004〜2006、三重県
敷地は三重県伊勢市郊外の分譲地で、伊勢神宮内宮まで車で10分の距離にある。典型的な郊外の分譲地のように、建売住宅がほとんどを埋め尽くす中、この住宅はひときわ記号のように建っている。
クライアントの家族構成は、夫婦、子供二人(三人目を妊娠中)である。クライアントからの要望は、以下であった。
-中庭があること
-キッチンから子供の活動が見渡せること
-リビング・ダイニング・キッチンができるだけ中庭に開放的であること
-三台分の駐車スペースを確保すること
様々な中庭の構成を検討した結果、二層吹抜けのリビング-ダイニング-キッチンの空間と、一層分の天井高をもった子供部屋が連続しながら中庭を囲む配置となった。その平面形は、凹を逆さまにしたような形をしており、またファサードの形も凹の形をしている。
敷地斜め向かいに2階建ての住宅が建っていることから、ファサードは南面しているが一切窓を設けていない。その代わりに、矩形のファサードを凹型に切取ることで中庭に光を入れ、その光が中庭を囲む空間に行き渡るようにした。
これは、都心において、前面道路、そして近隣住居が接近している環境においても有効な方法だと思われ、都市環境における住宅のプロトタイプ(原型)をも目指した。
ファサードには黒の御影石が張られることで、この住宅は、より一層記号化されることとなった。時に敷地斜め向かいにある保有林の緑など周りの風景や空を映し出すことで、石の重量感を見せながらも、同時にその存在の希薄さも見せている。
■個人住宅
敷地面積:219.20㎡
建築面積:80.40㎡
延床面積:121.09㎡
地上2階建て
木造
協力:若野豪宏(現場管理協力)
*第27回三重県建築賞(住宅部門、会長賞)